IBD会員ならびに唾液ΔpHIの測定ご希望の方々へ→茶葉納豆のお薦め
 
調査・公開想起の経緯:2009年11月3日の愛媛腸疾患友の会 会長様宛の下記メールをご参照下さい。 (e-mailでの唾液測定依頼、平成22年10月より毎月第4水曜日に青森市三上心療内科医院(Tel.: 017-737-0120 )にて測定を行っております)
 
本唾液測定とデータ解析の特徴
  本法は、(自称ですが)生化学的聴診器とも言える無侵襲の唾液ΔpHI測定と従来から行われている血圧・口腔温の測定を組み合わせて行うもので、複数回の測定データをパソコンに収録して経時的に配列し、被測定者の体調の推移を監視できる測定法ならびに解析法です。現在のところこの生化学的聴診器は医学会にまだ認知されてはいませんが、このΔpHIが唾液中の炭酸イオン濃度および炭酸脱水酵素濃度に関連した値であることが下記論文の研究で分かっておりますので、体調の善し悪しの概略を把握することが出来ます。また、ここで取り上げている炭酸脱水酵素は細胞の新陳代謝に関わる種々の酵素と同じく亜鉛(Zn)依存性の酵素なので、ΔpHI値が平均値近辺にある場合には血中Zn濃度も正常範囲にあり、かつ新陳代謝が盛んな消化管粘膜の状態も含めて体調が良好であると言えると想定されます。
  良くZn不足で味盲になると言われますが、これはZn不足によって寿命約10日の味細胞の新陳代謝が低下してその数が減った結果の症状であると言えますし、このことに関する研究成果は上記ΔpHIの値を指標にしながら体調を管理することの意義を間接的に支持してくれるとも言えます。過渡現象pHメータ開発者の私が1986年以来維持し継続しているこのΔpHI測定法が、もし炎症性腸疾患などの難病でお悩みの方々のQOL向上に少しでもお役に立てるならば幸甚と存じます。
 
・測定の手順:
①被測定者の名前を(測定者が持参した)データシートにご記入下さい。
②唾液採取:自動デジタル血圧計をセットし作動させた後に小紙片2枚を舌背に載せ、口を閉じて唾液が十分しみこむまで待ちます(舌背2分間→舌下部2分間→水添加30秒間のシーケンス中の最短採取時間を計測)。
③唾液の初期5分間におけるpH変化(DpHIまたはΔpHIと表記、ΔpHI = pH5 - pH1)とNaとKイオン濃度の測定開始後に生年月日、体調、体重、喫煙の有(本数/日)無、などの質問にお答え下さい。
④唾液の諸測定開始後5分以降に体調の概略を示すΔpHIのデータが得られますのでその説明をお聞き下さい。
⑤必要に応じて亜鉛含有食品リスト(参照http://www.fukura.ne.jp/ca-res/Zn-food.htm)などの資料を受け取ってお帰り下さい。(本健康調査へのご協力、有り難うございました。)
 
・器具の扱いならびに消毒:
①口腔内に挿入する器具(ピンセット、口腔温計)は5%ヒビテンエタノール液と約3%イソジンうがい液で毎回二重に消毒致します。
②唾液サンプルと各イオンメータの接触面は70%エタノール綿球で毎回消毒致します。
 
・計測機器:過渡現象pHメータ(公開実用新案(佐藤 匡、H02-146361)、堀場製pHメータ+アタッチメント)、堀場製イオンメータ(Na+、K+)、デジタル血圧計、デジタル口腔温計
注:公開実用新案の検索の仕方(18/12/31)→アクセスサイト→実用新案□をチェック→検索項目を「発明・考按の名称/タイトル」に設定し、検索キーワードにタイトル「過渡現象pHメータ」を入力→検索→一覧表示→実全平02-146361をクリック→文献単位PDF表示→認証用番号を入力→送信→(PDF)ファイルを開く→許可する→明細書が表示される。
 
臨床関連研究論文:
涙液の研究
a.佐々木克哉、他:眼科領域における定常状態pH値とpHの時間変化量 1.正常人の涙液.眼紀43: 1413-1418, 1992
b.佐々木克哉、他:安静時と刺激時の涙液のpH、pH変化量、Na+およびK+濃度の差異.あたらしい眼科11: 1219-1221, 1994
c.佐々木雄一、佐藤匡:ヒト涙液の分泌速度と各種電解質濃度との相関性および基礎涙液分泌減少者の障害型分類.日眼会誌102: 42-48, 1998
 
唾液の研究
a.島崎伸子、他:唾液pH変化曲線解析法の臨床応用 -測定条件の検討.日歯心身8: 11-18,1993
b.島崎伸子、他:唾液pH変化曲線解析法の臨床応用 -ストレス負荷に伴う唾液pHおよび自律反応の変化-.日歯心身8: 37-44,1993
c.佐藤匡:橈骨骨塩密度とヒト固有唾液の各種イオン濃度との関連.岩医大歯誌21: 44-50, 1996
d.佐藤匡:橈骨の骨塩密度とヒト固有唾液のpHおよび[K+]との相関に対する加齢因子の影響.岩医大歯誌21: 197-204, 1996
e.三上一治、佐藤匡:異味覚症を伴う過換気症候群の1例における臨床経過と安静時唾液pH初期変化量の推移.心療内科4: 51-55, 2000
f.佐藤匡:(総説)唾液の分泌機序とその臨床的解析法.日唾誌41: 1-9, 2000
g.TP Sato, & K Mikami: Recovery of a patient with a recurrent dysgeusia monitored by salivary variables and serum zinc content. Pathophysiol 8: 275-281, 2002
h.TP Sato, & K Mikami: Retrospective investigation on management of salivary hypofunction concerning with serum zinc content. Pathophysiol 9: 75-80, 2003
 
炭酸脱水酵素の研究
a.佐藤匡:唾液分泌における炭酸脱水酵素の役割についての1モデル.日唾誌42: 32-35, 2001
b.佐藤匡:(総説)炭酸脱水酵素の基礎.ICUとCCU26: 776-782, 2002
c.TP Sato:Carbonic anhydrase accelerates buffering speed of the bicarbonate system without change in buffer value of the resting-saliva. (in contributing). JpnJCAR 1: 8-13, 2005


・所属学会:日本炭酸脱水酵素研究会日本唾液腺学会日本生理学会
・著書:Sato TP. Introduction of Transient Phenomenon pH Meter, ΔpHI and BioMedical Application.  Hizume(Shiwagun): Fukura Ltd; 2001.


2009年11月3日送付e-mail控え

 
愛媛腸疾患友の会 会長 様
前略ごめん下さい
 本日クローン病を煩い32歳で亡くなられた方の葬儀ミサに参列して参りました。遺族代表の方の話ですと、高校3年の時にクローン病であることが分かり、その後二度の手術を受けて闘病していたが11月1日に体調を崩して入院し、その夜に逝去したとのことでした。
 帰宅してからネットでクローン病について調べてみましたが、その症状の推移などから亜鉛不足に端を発する悪循環に陥っている可能性が頭に浮かんで参りました。その背景には、私が2003年に定年で岩手医科大学歯学部口腔生理学講座を退職するまで研究して来た唾液pH変化曲線解析法による論文成績があります。端的に言いますと、何らかの原因で血中の亜鉛濃度が低下しますと炭酸脱水酵素活性が低下し、それによって耳下腺唾液や胃酸分泌が低下するので胃における食物中亜鉛のイオン化の低下と腸管での吸収能率低下が起こり、さらに血中亜鉛濃度が低下するという悪循環につての推論です。この他に亜鉛は細胞の分裂増殖などの新陳代謝に関する酵素群のキー元素でもあるためにクローン病などの消化管粘膜が冒されるという症状が現れる可能性があります。
 このような推論を裏付ける情報はhttps://www.skincare-univ.com/article/017334/の亜鉛過剰症の症例部分に見つかりました。亜鉛剤の服用では過剰になる危険性が出てきますが、亜鉛含有食品を選んで亜鉛の摂取量を増加させる分にはそのリスクを低減させることが出来ますし、定期的な唾液測定で体調の追跡が可能です。
 私のこれまでの研究で唾液pH変化曲線の初期5分間の変化分ΔpHIの値が唾液に含まれる炭酸脱水酵素濃度に関連していることが分かっておりますので、もしかするとこの測定を通じて腸疾患で悩んで居られる方々のお役に立てるのではないかと考えた次第です。私は医学部および歯学部の生理学講座に在籍した生理学者で臨床医ではないので皆さんの治療に当たることは出来ませんが、小紙片を舐めて頂いて唾液を採取し、血圧と口腔温の測定データと共にパソコンで解析することは出来ますので、その結果に基づいて食事内容についてのアドバイスはさせて頂くことが出来ます。
 この唾液測定法は、日本で発明された機器に私が工夫を加えたものを使用しますので他には殆ど知られてはおりませんが、この測定法を使用して涙液について研究し眼科医二人が学位を岩手医大から頂いておりますし、一人の歯科医がこの測定法を手がけてくれましたので独善的なものでないことはお分かり頂けるかと思います。それから現代医学では炭酸脱水酵素についての研究者が少なく、この酵素の活性異常に関連する病は現代医学の一つの盲点であるとも言えるかと思います。
 このe-mailを差し上げる岩手県内の宛先を探したのですが、見つかりませんでしたので、もし貴方様が岩手県内の会員の連絡先をご存じでしたらお教え下さいませんでしょうか。私は現在日本炭酸脱水酵素研究会http://www.fukura.ne.jp/ca-res/の事務局長兼編集長を拝命しておりますので、臨床医学的にも有用な成績が得られた暁にはそちらの会を通じて医学会の方にフィードバックできると思っております。何はともあれ、一日も早くこの病が「難病」のカテゴリーから治療可能な病気のカテゴリーに分類される日が早期に訪れることを共に願いたいものです。
 長文のメールとはなりましたが、最後までお読み頂き有り難うございました。もしご希望でしたら、私の定年退職時に作成したCDに研究論文の表題などが入っておりますのでそれをお送り致します。折り返しご一報下さい。
草々

茶葉納豆のお薦め
 これまでに、①細胞の新陳代謝に関連する酵素群には亜鉛要求酵素が数種含まれていること、②味細胞の寿命が約10日であることから、亜鉛欠乏時に味盲になること、③茶葉には亜鉛が豊富に含まれていること、④唾液胃液の分泌には亜鉛要求酵素である炭酸脱水酵素が必要であること、などから家内にお茶殻で佃煮を作ってもらおうと頼んでいましたが、静岡から帰省した娘が納豆とお茶殻を混ぜて食べる方法があることを教えてくれた(18/12/30)。
  そこでインターネットで検索すると、a) 潰瘍性大腸炎の方の推薦食事メニュー、b) 茶殻のレシピ、その他の情報が見つかった。私は現役時代に、食物中の亜鉛が効率よく吸収されるためにはよく咀嚼された食物中の亜鉛が胃液によって効率よくイオン化し、そうして腸管で吸収されることが必要で有り、その上十分量の炭酸脱水酵素が産生されることが必要であるとの想定の下に唾液分泌に関する研究を行ってきた(1)。このような考えはCa吸収においても当てはまることなので、唾液分泌特性パラメーターの内のΔpHIと橈骨骨塩量との間に有意な相関が認められることも見いだしている(2)。
  お茶殻を食べることが体に良いのだと行っても一般には「にわかには信じがたい」ことと思われがちであるけれども、上記のような研究を行ってきた小生にとっては十分納得出来る事柄であり、唾液や胃液分泌の低下、消化管粘膜の炎症、などでお悩みの方には是非試して頂きたいと思います。ただ、体調が改善して来た場合に、より多くを望んで亜鉛の錠剤を飲んだりすることはお薦め致しません。その理由は、亜鉛の取り過ぎによる弊害が出てくるからです。茶殻・納豆を食べて唾液の出が良くなり、ご飯が美味しく食べられるようになったならば、その状況を保持するようにして頂ければ幸甚です。

文献
1) Tadasi P. Sato:A pH curve of human resting  saliva  sampled with a small paper slip and its medical application.  Pathophysiol 8: 283-290, 2002.
2) 佐藤 匡:橈骨骨塩密度とヒト固有唾液の各種イオン濃度との関連 岩医大歯誌 21(1): 41-50 (1996)
 
*******************************************************
    佐 藤   匡   Tadashi P. Sato
    〒020-0802 盛岡市つつじが丘21-14
Tel./Fax.: 019-651-4467 e-mail: tpsato@ictnet.ne.jp
    URL: http://www.fukura.ne.jp/tpsato
*******************************************************