岩手の風土記シリーズ(1)
九戸村おりつめの「オドデ様」
「むがしあったづもな・・・」ではじまる遠野物語の世界。岩手では各地に似たような
話があり、今も一部で信じられているようです。これから岩手の風土記シリーズとして
伝承、方言、行事など面白いネタを探してお届けいたします。
おりしも大船渡市吉浜の「スネカ」が、ユネスコの無形遺産に登録されました。男鹿の
「なまはげ」等と一緒に、「来訪神:仮面・仮装の神々」という事で、登録された事は、
この上ない喜びを感じます。今回は第1回目として、伝承の1つを紹介します。
岩手の北部に位置する九戸村の「道の駅おりつめ」に、奇妙な看板が立っています。
「オドデ館」というものです。この「オドデ」とはなにか俄然興味がわいてきました。
この館の正面には奇妙なフクロウみたいな像が鎮座して祭られて、「オドデ様」と示されていました。「オドデ様」とは何か早速中に入って聞いてみると1枚のコピーを渡されました。筆者だけじゃなく、知りたがり屋さんは多くいるのですね。
九戸地方の言い伝えによると、昔々、折爪岳の草刈り場で、村の若者が牛まぶり(牛の監視)をしていると藪の中から不思議な生き物が、ドデン、ドデンと叫びながら近づいてきて、やがて消えてしまいました。
数日して、名主が持山の見回りに入ったところ、妙な生き物が倒れているのを見つけ、縄で縛り家に持ち帰ったところ、いつのまにか神棚の上に、大きな目を開いてキチンと立っていたのです。この噂は瞬く間に村中に伝わり。村の人々はこの珍しい物を一目見ようと、
次々に名主を訪れて来たそうです。山で最初に見た若者もきて、「ドデン、ドデンと大きな
声をだしたのがこの鳥だ!」と言ったので、この生き物を「ドデ」と呼ぶようになりました。この生き物は時々「明日は晴れだ!」とか、「夕方雨だ!」とか叫び、それがまたピタリと当たるので、村人たちは、自分の運勢、失せもの、縁談、病気などを聞きに訪れ、名主の家は大繁盛するようになりました。いわゆるカリスマ占い師の出現です。
この「ドデ」は、毎日天井ばかり見て暮らしていましたが、ある日下を見ると名主は羽織袴で座っている。その前に村人たちが頭を下げ、賽銭箱にはお金が沢山詰まっている。それを見た「ドデ」は、「シラン、シラン、ドデン、ドデン」と叫びながら森深く飛び去ってしまいました。その後、二度と姿を見せなくなりましたが、今でも近くの森でそれらしい声を聞くといいます。賽銭箱を一緒に持っていかれなくて、名主はほっとしたことでしょう!幸運を呼ぶ「オドデ様」、「座敷わらし」の変形バージョンと勝手に推測した次第です。
この「オドデ様」をモチーフにした道の駅おりつめの「オドデ館」は、地元の農産物の産直販売や、食堂などが併設されていて割と楽しい場所になっています。向かいに折爪岳がそびえ、いかにも「ドデ」が住んでいるような怪しい雰囲気を醸し出しています。中腹には「オドデ様」の巨大な像が鎮座しているとの事です。
今回は久慈の帰りに立ち寄りましたが、近くには軽米町のフォリストパーク等もあり是非一度立寄って、「オドデ様」を拝んで見てはいかがでしょう!何かいいことがあるかもしれませんよ。