岩手の風土記シリーズ(15)  盛岡三大麺 じゃじゃ麺編

 

盛岡在住の方なら避けては通れないテーマが「盛岡三大麺」である。この三大麺とは言わずもがな「わんこそば」、「じゃじゃ麺」そして「盛岡冷麺」である。この盛岡三大麺についてそれぞれの云われ等について語っていこう。第2回目は「じゃじゃ麺」である。「盛岡っ子のソウルフード」という別名もあるとかないとか?今から半世紀程前に旧満州(現在の中国東)で過ごした「白龍(パイロン)」の創業者が現地で食べた炸醤麺(ジャージャーメン)をベースに、盛岡っ子の舌に合うように何度も工夫をかさね、盛岡オリジナルの「じゃじゃ麺」を完成させた。茹でたての平打ち麺(うどん)に、きゅうり、ねぎのみじん切りと秘伝の肉味噌がのり、酢、ラー油、にんにく、添えられた生姜などをお好みで加えよくまぜてもよし、少しずつまぜて食べてもよし、各自が入れる薬味や調味料の分量でそれぞれ味が異なり、自分だけのオリジナルじゃじゃ麺になるという。(イメージ的にはミートソーススパゲッティか?)そして、じゃじゃ麺ファンの最後の楽しみは「チータン(チータンタン)(卵スープ)」だ。麺をあらかた食べ終わったら、皿に生卵を割り入れ、「チータンお願いします!」と店員に声をかけ、茹で汁を注いでもらい、ねぎ、肉味噌を加え美味しい「チータン」が出来上がる。麺を少し残しておくのがポイントだ。初めて食べる方はびっくりするが、盛岡のじゃじゃ麺は食べるほどくせになる食べ物だ。最近は観光客もマップ片手に店を訪れる姿がずいぶんみられるようになってきた。 盛岡市内には約20軒近くのじゃじゃ麺専門店があり、その店独特の味があるようだ。また、そのほかにも蕎麦屋のメニューにも「じゃじゃ麺」が乗っているところもある。それほどまでに盛岡っ子にとっては身近な食材であることが伺える。まずは最初に紹介しなければならないのは、元祖じゃじゃ麺の人気店「白龍(パイロン」である。この店は、内丸に本店があり、川徳店、盛岡駅フェザン店と数か所にお店を構えている。筆者はフェザン店で食したが、開店と同時にほぼ満席状態になっていた。注文の取り方が特徴的で、まずは麺の量(大中小)、    【白龍(パイロン)のじゃじゃ麺】

茹で加減、チータン(卵のスープ)の有無をオーダー時に聞かれる。筆者は中の茹で時間普通を頼んだが、中にはウエルダンの茹で時間でオーダーする方も見受けられた。薬味と調味料でオリジナルの味にできることで、はまる人が多いことが伺われる味であった。どちらかというと好き嫌いがはっきりする感じがした。腰の強い讃岐うどんなどを好む方には何か物足りない感じがするような気がするし、うどんとは一線を画しているようだ。次に紹介するのは、太田にある「ちーたん」という店である。郊外にあるお店なので、車で行くには好都合である。駐車場もあり県外ナンバーの来店者も多くきていた。ここではじゃじゃ麺の食べ方の標準的なマニュアルが各テーブルにおいてあり、初心者でも気楽に訪問できそうだ。基本的な構成は一緒で、オーダー時に麺の量を自己申告すればよい。  【太田のじゃじゃ麺専門店ちーたん】

また店員さんが食べ方をチャーしてくれるのでありがたい。基本的な構成はほぼ「白龍」と同じで、平打ち麺に、きゅうりとネギの上に肉みそが乗っているものである。今回は初めてチータンをオーダーしたが、麺を少し残した状態で、たまごを割り入れて良くかき混ぜ、お願いしますと声をかけると店員さんがやってきてゆで汁を入れてくれる。これをよくかき混ぜ、必要に応じて薬味、調味料を入れてオリジナル味のスープに仕上げるのが     【ちーたんのじゃじゃ麺】

ちょっぴりうれしい。(この店ではJAFの会員証を提示するとチータンが無料になるサービスがあった)このように盛岡市内には十数軒のじゃじゃ麺専門店が存在するが、それぞれの店の味を比較することもまた、一興である。さらには、これだけの専門店があるということは、日常的に市民に食されているもので、ある意味「わんこそば」のおもてなし的な側面とは違い、市民の日常食であることを意味し、盛岡市民のソウルフードたる所以が伺える。   【ちーたんのチータン(スープ)】

最後に筆者が思っていた「じゃじゃ麺」の由来を示しておこう。盛岡市民の間では、驚いたときに使う独特の感嘆詞が存在する。そう、「あまちゃん」で有名になった、「じぇ!じぇ!じぇ!」である。盛岡市民はこの感嘆詞を「じゃ!じゃ!じゃ!」として使っている。ちなみに筆者のふる里であるケセン国では、「ばあ〜!」という感嘆詞を使い分ける。この「じゃ!じゃ!じゃ!」は状況に応じで「じゃっ!」、「じゃ〜!じゃ〜!」、「じゃ!じゃ!じゃ!」と、驚愕の度合いが大きくなってくる。単純に驚きを表すだけでなく、その強弱、語尾の伸ばし方などによって意味合いが異なってくるという、便利で、難解な言葉である。この辺に関しては別の機会を設けたいと思うが、「じゃじゃ麺」はこの「じゃ!じゃ!じゃ!」が由来で、食べた人がびっくりする程美味しいと思ったことから、その名前が付けられたものと信じて疑わなかった。こんな珍説があっても楽しいのではないか?いずれにしても、盛岡市民のソウルフードと称される、「じゃじゃ麺」を是非一度、味わってみてはいかがか!