岩手の風土記シリーズ(3)
八幡平市平笠裸参り
岩手では小正月(1月15日前後))に様々な行事が行われています。昨年世界遺産に登録された「吉浜のスネカ」も小正月の行事として、家内安全と無病息災を祈念して家々を歩く行事として知られています。また、筆者の郷里でも、小正月に権現様(虎舞)が近隣の家を回って歩く恒例行事があり、獅子頭に頭をかじられると病気にならないとの言い伝えがあります。またミズキ団子(花団子、めっこ(繭)団子)を飾り五穀豊穣を祈る風習も各地で行われています。今回は毎年1月8日に行われる八幡平市平笠地区の裸参りを取材してきました。この裸参りは、女性が主体的に参加する神事として全国的にも有名で、八幡
【前日の宮田神社】 【当日朝の宮田神社】
平市の冬の風物詩となっています。
この裸参りは、江戸時代中期の1700年代に岩手山噴火の沈静化を祈願するために、男性だけで行われたのが始まりと伝えられています。その後戦争に出兵した夫や息子の武運長久を祈願して、留守を守る女性により裸参りが継承されてきました。しかし昨今、地元からの参加者が減り続けてきたため、地区以外からの参加者を募集して、現在に至っています。今年も遠方では埼玉からの男性が参加していました。また、地元の某Mテレビの新人女性アナウンサーの登竜門の一つになっているとか、いないとか・・・今年も新人女性アナも参加していました。
【裸の男衆】 【参列者の女衆】 【平笠裸参りの行進】
さて、この裸参りは平笠地区にある宮田神社から大更にある八坂神社までの約8kmの道のりを練り歩くのですが、無病息災、五穀豊穣、商売繁盛、交通安全等を祈願して歩き、地区の家々や、諸施設を回るため、約5時間の道のりとなります。参加者は水垢離で身を清めてから、白装束に鉢巻き、腰にしめ縄、わらじを履き、口紙をくわえ、験竿を手にした姿が正装になりますが、今はヒートテックやフリースを着て防寒対策バッチリという小学生も多く見受けられました。ところで口紙(一行が口にくわえた紙)はどんな意味があるかご存知でしょうか?これは悪霊の侵入を防ぐためで、一行が行列している間は話しをするなど口を開けることが禁じられています。また験竿は毎年新調されていて、神様が宿るとされています。大きさは約2.5mですが、風が強いと持っているだけでも大変だなと感じました。
前日の午後宮田神社に行ったのですが閑散として静寂に満ちていた状態でした。当日の朝8時過ぎに現地に到着すると、県内各局のTV中継のクルーや、報道関係者、および一般カメラマンでごった返していて、車を止める場所を探すのに一苦労でした。
一行はまずは宮田神社の神前で拝詞を唱えた後、ほら貝の合図で出発します。当日の朝の気温は氷点下5℃という厳しい気温です、今年も朝8時半頃宮田神社を出発しました。
【雪の八坂神社前】 【八坂神社での拝礼】 【無事に終了】
出て直ぐに神社隣の民家の前で一同そろって祈願をします。このように行く先々で祈願していくために、ゴール地点の八坂神社についたのは予定時間を大分遅れて午後1時半を回っていました。おりしも、昼過ぎから降りだした雪が本格的になり、一行には新たな試練が加えられたようでした。いずれにしても、寒い中無事にゴールにつき何はともあれです。ご苦労様でした。